高はし屋さんのこと

先週の19日の日曜日のお昼頃、TVを点けっぱなしで仕事をしていたところ、丁度お昼のニュースの時間で、「今日午前1時頃、葵区の老舗煎餅屋で火事・・・」と言う声が流れてきた。葵区には老舗と呼べる煎餅屋が数件あり、まさかねぇと思って振り返ると、画面いっぱいに見慣れた「高はし屋」さんのビルが映っていた・・・
え?! 「3階の居住部分から男性と思われる遺体が発見された。」
ヨシキちゃんだ・・・ ヨシキちゃん以外にはありえない・・・ 一体どうして・・・?? 頭の中が真っ白になってしまう。
ヨシキちゃんとは、30数年前、新静岡駅の線路脇にある「珈琲男爵」と言う珈琲専門の喫茶店での常連仲間。そのうちでも気の合う5人、カズオちゃん、ヨシキちゃん、トクナガのおじさま、和、そして私の5人組は、当時一緒によく飲み歩いていたものだった。その時以来の長いお付き合い。ヨシキちゃんは結局独り者を通してしまったから、お姉さんと妹さんがいらっしゃることは知っていても何処にお住まいやら、なんと言うお名前なのやらはさっぱりわからない。
七間町の商店街の活性化を目指して「七ぶらシネマ通り繁栄会」の会長を務めたり、町内会長をしたりしていたから、きっと新聞の訃報欄を注意していればお葬式の通知が載るだろうと1週間注意していたけれどそれもなくて、もしかしたら密葬だったかもしれないと思うのだけれど、このままにしてしまうことには耐えられないよ・・・
で、今日、たまりかねてとりあえずお店まで出かけてみた。当然のこと店のシャッターは閉められており、ご迷惑をおかけしたことのお詫びと閉店のお知らせ、長年のご愛顧への感謝などが綴られた張り紙がしてあった。
それでも何かわからないかしら、と、お隣のこれも老舗の天婦羅屋「天文」さんに声をかけてみた。
すると、音羽町に妹さんがいらっしゃると、ご丁寧に妹さんのお名前と電話番号を教えてくださって。
花を用意して来てあったので、そのままナビを頼りに音羽町へ。
妹さんのお宅は幸いにすぐ見つかり、ご仏前にお花をお供えしていただくことが出来ました。
「あなたがクキさんですか〜 ヨシキからよく話を聞いておりました。」
私が想像していた通り、脳梗塞で倒れた後の出火だったようです。数年前に一度脳梗塞を患ったのは知っていましたし、日頃火を扱う仕事をしているヨシキちゃんが火の不始末などするはずもありませんから。
妹さんと色々話をしてから、帰りがけに
「ヨシキの最後の仕事です。お荷物でしょうが召し上がってください。」とお煎餅の詰め合わせをいただいた時には、不覚にも涙が出てしまいました。
「まぁ、高はし屋さんのお煎餅はもう二度と口にすることは出来ないと思っておりました。ありがとうございます。涙が出てきちゃう・・・」
せっかくのヨシキちゃんの最後のお仕事、私の知っているヨシキちゃんの所縁の方々にもおすそ分けしていただこうと思っています。