新幹線焼身自殺

6月30日に、新幹線内で焼身自殺をした71歳の男性、その後、色々と分かってきたようです。住んでいたはげちょろけた安アパートの映像を見たときには、多分生活に行き詰ったのだろうな、と思ったのですが、やはりその通りだったようで。自殺直前に、近くにいた女性に「拾ったからあげる。」と数枚の千円札を渡したと言うけれど、それは多分、彼の所持金の全てだったのでしょう。
2ヶ月に一度の24万円ほどの年金の中から実家に仕送りもしていたとか、今まで家賃の滞納はなかったとか、人間関係も悪くは無かったことなど色々情報が流れるにつれ、多分、かなり几帳面で真面目な性格だったのだと思われます。 
その彼が、何で、他人を巻き込むような事件をおこしたのか? 万策尽き果てたと言って、静かに死ぬと言う方法を取らなかった理由は何なのだろう? 年金事務所で首を吊るとも言っていたようですけれど、その方法は取らずに、密室に等しい、しかも大勢の人が乗っている新幹線の中でガソリンをかぶって火をつけたら、どれほどの人が巻き込まれ被害に遭うのか、それは想像に難くは無いないことなわけで… 現に巻き添えを食ってなくなられた方もいる…
やはり、抱えきれなくなった怨嗟・怒り、真面目に生きてきた結果がこれかと言うむなしさ、ばかばかしさ、周囲にひしめく他人が全て幸せに見えたのかもしれない。都会に住めばなおさらのこと。
格差社会はどんどん進んで、生活に行き詰っている人はどれほどいるのだろう。
年金機構での情報流出事件に絡んで、お詫びの文書を送るのにこれまでかかった経費が1000億円を超えたと言うニュースが流れました。その経費は税金で賄われる? 大企業や銀行、或いは年金機構のような特殊法人には、破綻しそうになれば公的資金が導入され、誰もさしたる責任を問われない。その公的資金は広く薄く(?)国民が負担するわけで、その国民が生活に破綻をきたせば、それは自己責任だといいます。「新自由主義」なわけです。怒りも溜まるだろうな…
新幹線の乗車時に手荷物検査を、だとか、安全性に関する議論も始まっているみたいだけれど、この格差社会の矛盾がある限り、どのような手を尽くしても、いつ怒りの矛先がゆえなく自分に向けられる可能性がないわけではない… なんだか根底にある怒りに駆られて弱者同士がいがみ合っているという図式です。
オレオレ詐欺だって、やはり根底にあるのは「お前ら、年金で優雅に暮しやがって。」と言う怒りなのかもしれないわけで。
先日読んだ「資本主義の終焉と、歴史の危機」(水野和夫著・集英社新書)の内容を思い出しましたっけ。この本、面白かった! 難い題名ですけれど私程度の脳みそでも理解可能なほどの平明さで論理的に書かれています。この事件は終焉に向かいつつある資本主義社会の象徴のような気がいたしました。

巻き添えでなくなられた方、被害に遭われた方は無論のこと、焼身自殺した犯人に対してすらも、何かしらの悼みを覚えたりしています。