石州半紙

今年考えついた技法に使いたいので、石州半紙を探しに出かけました。今年の作品「朝靄」に使った技法なんですけれど、今年の場合は思いついてすぐにやってみたし、その技法の部分は小さな面でしたので、金箔の間に挟まれている和紙を使ったのですが、今考えている図柄ですと、半紙くらいの大きさが欲しいし、箔の間に使われている和紙はせいぜい10cm角の大きさで、つぎはぎでやるのは面倒だし、やっぱり石州半紙を探してみよう、と。
ネットでは出ているのですけれど、厚みやら手触りやら、実物を見て本当に考えている技法で使えるかどうか確かめたかったのです。何しろ石州半紙の記憶は子供の頃ですから…
出かけたのは清水区にある「紙泰」という紙の専門店。私が子供の頃からあるお店で、たまにその前を通ることはあるのですが、営業しているのかいないのかも定かではないような、店の中の照明も消えているようなお店です。廃業しちゃったかしら? と、少々心配しつつ行ってみたところ、照明はついていないけれど営業中で、年のころ70代後半かもう80に手が届くかしら? と思えるご主人がお一人でお店番でした。
「石州半紙、扱っていらっしゃいますか? 無ければ美濃紙の、なるべく薄手で水に強いものならそれでもいいんですけれど。」
「石州、あるよ。ちょっと高いけれど。今時、石州を買いに来るお客さんなんていないからねぇ。ちょっと待ってな。」
と、脚立に上って棚の一番上からホコリだらけのダンボールを下ろしてきました。蓋を開けるとさらに箱が納まっており、その中に石州半紙が一杯入っていました。
「ちょっと見せていただいてもいい?」と、汚れてハネてあるのを触らせてもらって、やっぱりこれだ!
「高いって、1枚おいくらなの?」と聞くと、1枚100円とのこと。
「じゃ、20枚ください。」
かなり昔に仕入れたものだそうで、手漉きの和紙です。一番上に乗っている和紙のかすかな汚れを気にしたのでしょう、上の数枚をハネて下の方から取り出そうとしていましたから、あ、私の使い方だと多少汚れていても問題は何も無いから、上から順に取ってくださって結構ですよ、もったいないから上のをハネたりしないでね。」
紙の枚数を数えながら、ご主人と和紙談義が始まり、今ではこの半紙を作っていた人もお亡くなりになって、跡継ぎもいないから廃業なんですって。
今では石州紙は美濃紙や細川紙とともに手漉き和紙として日本の無形文化遺産ってワケですけれど、文化遺産ってことは「絶滅危惧種」って事に他ならず、ま、七宝も似たようなものだわ〜 (^^ゞ
「おいくら?」と聞くと「沢山買ってくれたから860円でいいよ。」ですって。
「あら、買ったのは10枚じゃないわ、20枚よ。いくらなんでも860円じゃ、オジサン、大損よ!」
「あ、そうか。ええっと、1680円だな。」
「消費税はいいの?」
「そんなもん、いらねぇ。」
で、1680円をお支払いして。さぁ、これで色々作品作りの仕度や段取りもついたことだし、少しずつ仕事を前へ進めましょうか。