大間悠司氏の訃報

台風8号が明日辺りどうやら静岡の真上を通過しそうです。それに伴う雨雲でしょうか、今朝から雨が降ったりやんだりを繰り返しています。時折、清水の街並みが白く煙ってしまうほどの雨が降ったかと思うと突然に青空がのぞき、かぁっと日差しが差し込んだり、遠くで雷鳴が聞こえたりと不安定な空模様。珍しくヒメも外出をねだらず、おとなしく出窓で昼寝中。

あまり大きな台風ではありませんからさほど心配はしていないのですが、明日台風本体が近づいてくるころにはやはり風も強くなるでしょうから、外に出してある雑草を詰めたゴミ袋は取り込んでおいた方がいいかも。

先日、大間悠司氏の訃報が届きました。2000年前後に変形物の素地に取り組んでいた私は、焼きあがった素地の内側に大間氏に指物で箱を作っていただいてはめ込んで仕上げる、という仕事に取り組んでいました。あの頃の私の作品は、大間氏がいたからこそ出来上がったものなのです。その後も親しく交流は続いていたのですが、コロナのせいでここ数年はご無沙汰ばかり、今年になってしきりに一度会いに行かなくっちゃという気に駆られていたのですが、本展の仕事が終わったころに急にまた感染者が増えて、落ち着いたらお伺いしようと考えていた矢先でした。

お葬式は家族葬とのことでしたから、せめてお通夜に行って最後のお別れ、大変お世話になりました、私がこうやっていまだに仕事を続けられているのもあの頃悠ちゃんにお手助けいただいたからです、とせめてお礼を一言。

悠ちゃん、悠ちゃんなんて生前気安く呼んでいたのですけれど、駿河指物の職人として各種の「内ホゾ」技術と木象嵌技法に優れた業績を残し、「現代の名工」にも選ばれた人です。日本工芸会の正会員でもありました。

「ヒデコにやるわ。」と言っていただいた彼の作品、かぶせの蓋をのせて手を離すと音もなくするすると降りて行き、底に行き着くほんのちょっと前に一瞬止まって、スーっと降りてぴたっと収まる、その技術の凄さ… 8月7日享年88歳だったそうです。

改めて、ご冥福をお祈りいたします。この台風が去って湿気が抜けたら、改めて彼の作品を写真にとってアップするつもりです。何しろ木工作品にとっては湿気も極度の乾燥も大敵ですから…

お通夜の会場で、あの頃の工芸会の仲間たちと何人も顔を合わせました。漆や木工の方たちです。ずいぶん久しぶりでしたから、皆さんびっくりするほどお年を召していらして、あ~多分彼らの目に映る私も随分婆ぁになってるんだろうな、なんて。否応なしに歳月は過ぎて行きます。あの頃が花だったわよね、などとひとしきり立ち話をしてかえってきました。