シネマ歌舞伎

今週一杯、映画館でシネマ歌舞伎女殺油地獄」をやっているので、行って来ました。実を言うと、以前NHKの芸術劇場で放映されたこの作品をDVDに落としたものを持っていて、一度見ているのですが、やはり大スクリーンで見たいなと思って、暑さも暑し、家でくすぶってばかりいないでクーラーの効いた映画館へ逃げ込むのも悪くないなァ、と。
やはり、大スクリーンならではの迫力でしたよぉ〜〜
片岡仁左衛門の河内屋与兵衛、まことにもって「はまり役」です。私もどっぷり近松の世界にはまってしまいました。
大昔、90年代か80年代頃、和田勉の演出で近松特集のNHKドラマが何本かあって(心中天網島と心中宵庚申と女殺油地獄などだったと思います。)その中での河内屋与兵衛を演じていたのは松田優作でした。お吉は小川智子だったかな。松田優作の与兵衛も、ワケのわかんない自己中の若者の孤独と狂気を良く演じていたけれど、惜しむらくは「可愛げ」がなかった。奉公人上がりの継父に我儘一杯に育てられた若者の、嘘八百を並べ立てて継父から金をせびり取ろうとするときの「可愛げ」 そしてそれが通用しなくなったときにガラリと豹変する態度。その凄まじさはそれ以前の「可愛げ」があってこそ迫力を増すということですもの。その点、仁左衛門のすごかったこと!
この作品は享保年間に近松門左衛門人形浄瑠璃の台本として書き下ろし、人気の近松作品だということですぐに歌舞伎にもなったのですけれど、当時は不評をかってすぐに打ち切りになったとか。見直されたのは明治期らしいのです。江戸時代には、与平は余りに常軌を逸した若者に過ぎて、なんじゃ、こりゃー?? ってところだったのかも。今では結構ありふれてる若者像なのかもしれませんけれど。
10月には中村吉右衛門の「一谷嫩軍記」来年のお正月には坂東玉三郎泉鏡花三部作(夜叉ヶ池、天守物語、海神別荘)がシネマ歌舞伎として上映されるようです。また行かなくっちゃ〜♪