ベルンハルト・シュリンク

このところ、立て続けにベルンハルト・シュリンクの小説を読んでいます。シュリンクは1944年生まれですから、私より5歳年長で、いわゆるドイツの戦後文学に位置づけられる作家なのでしょう。法学者でもありますから、さほど沢山が出版されているわけではありません。
初めて読んだのは2003年で、「朗読者」でした。これは読書日記にも書いてあります。で、ついこの間、「逃げていく愛」という短編集を読んで、今は「週末」と言う小説を読みかけたところです。
短編集を読んでいるときに深く感じたこと。それは第2次大戦に対する歴史認識においてのドイツと日本の極端な差と、それを反映した戦後教育のあり方の違いでした。そのことは今更ながら、ちょっと新鮮な発見だったわけで。
つまり、ドイツでは、大戦の総括として、ナチスを完全否定し、それに基づいてホロコーストに対しての責任認識を徹底的に学ばされているわけで、ところが、日本人として私たちが学ばされたことは、どちらかと言うと被害者意識だったような気がします。まぁ、二度にわたる原爆投下なども、それに深く関わっているのでしょうけれど。あるいは、東京裁判が「事後法」によって戦勝国から押し付けられたという意識を持つ場合もあるでしょうし・・・ 誤解を恐れずに言えばどこかロマンティックですらある「戦争っていけないよね。原爆で大勢が死んだ、学徒出陣や、沖縄戦・・・ 私たちは戦争を放棄します。」って。これは責任の認識とは似て非なるものなのかもしれない。何か、そんなことを感じました。
この人の小説の中には、ドイツ人としての責任の認識、そのことが底流に脈々と流れている、つまりドイツ人としての後ろめたさ、そしてそれを強要されているのではないのかとどこかで身構えてしまう、そして身構えてしまう自分自身への焦燥が感じられると言うことなのですけれど。
「逃げていく愛」は7編の短編からなっています。それぞれが「愛」の話です。興味のある方はどうぞ。新潮文庫です。単行本も出ています。