注意散漫

我が家の建っているところは、昭和35年頃に、個人の持ち物のみかん山を住宅地に直したところであり、企業が造成したと言うわけではないので、住まうにはまことにのんびりしている。つまり、あまり合理的に出来ているわけではなく、空き地や死に地が点在していているのだ。
道だって、ようやくウチの辺りまでは市に移管されたのだがウチより上は行き止まりの私道、それもあまり車が通ることを想定しているとは思えない、すれ違いも出来ないような狭さの上に、何となく水平とは言えず傾いたりしている。ま、昔の農道に毛の生えたようなものだ。行き止まりの道だし、町内もせいぜい10軒ほどなので、お互い譲り合って通行している。
そんなだから、たまに道に慣れていない外部の人がやってくると、小さな事故が起きることがある。勿論、大きな事故にはなりようもなく、せいぜい1メートルほど下がった空き地に車ごと転げ落ちたりするくらいのもので、けが人は出たことがない。
で、午前中のこと、エアコンを付けて締め切っていたのだが何となく玄関から呼び声が聞こえてきた。出てみると、ウチの真上の土地を借りて畑を作っているオジサンが立っている、何の用だろう?
済みませんけど、電話を貸してもらえるかね?
いいけど、どうしたの?
いやぁ、車をバックしようとして慌ててアクセルとブレーキを間違えてぶつけちゃって、動かなくなっちゃったから息子を呼ぼうと思って…
あらら、それは大変ね、今、電話を持ってくるわ。
どうも車を空き地に入れて作業をした後、戻ろうとバックしてから道に入ろうとして間違えて勢いよくアクセルを踏んでしまい、空き地の境に積んである2段ほどのブロックにぶつかって前輪をパンクしたらしい。
すぐに息子さんとの連絡はついて、オジサンはタイヤ交換の準備を始めている。外は焼け付くような暑さである。70代後半くらいのオジサンだし、帽子はかぶってるけど、こりゃ大変だ… 熱中症で倒れたりしたら困っちゃうし…と、私は気が気じゃない。あ、お茶でも振舞ってあげようか。息子さんも来たようだし、と冷茶を2杯入れて、外に出た。マァ、二人とも玉のような汗をかいてる。
お茶、いかが? と言うと二人とも一気にごくごくと飲み干して… 間もなく帰っていったが… 
暑いから年寄りは注意散漫になるんだわ、私も気をつけなくっちゃ〜 なんてしみじみ思った次第ではある。