笑顔測定器

笑顔測定器なるものがあるらしい。開発されたのは2007年で、アメリカかどこかの新聞でその年の最低の発明のひとつに認定されたとか…
最近、ある生命保険会社が「一日のうちに笑顔でいる時間がどのくらいあるか」というアンケートをとったら、年齢が進むにつれて笑顔でいる時間がどんどん短くなっているという結果が出たらしい。二十歳以下は150分だが、四十代となると97分だったらしい。その話題の延長で、ちかごろでは接客業や営業職を中心にこの笑顔測定器なるものを導入する企業が出てきたというようなことを、今朝のNHKのニュースが取り上げていた。げー 笑顔までも管理する社会かァ… と一瞬ギョッとしもしたし、貼り付けたような笑顔を向けられたときの居心地の悪さを思いもしたわけだけれども、そのうち、ふと思い出したことがある。
そういえば、主人が亡くなった後のしばらくの間、私、鏡に向かって毎朝笑顔を作っていたっけ。結果が出てしまった以上、嘆くことに時間を費やさない、私は生きていかなくちゃいけないのだから。明日になれば又太陽は昇り、私は食事をし、仕事をし、そうして生きていかなくちゃならないのだから。だとすればまず「笑顔」という形から入ってみればいずれそれが本物の笑顔になるときが来るだろう、と。器によって形が決まる水の如く、器の形が決まれば中身もおのずから決まるに違いない、と。
おかげさまで、以来「いつもニコニコと楽しそうねぇ」と周りから極楽トンボ扱いをされるわけだ。でも、本当のところ、結構日々、極々些細なことで楽しいのだから仕方がない。
まぁ、笑顔まで管理されてたまるものか、と怒ることも健全な反応なんだろうけれど、乗っかってみて「笑顔」の器にひと時はまり込んで見るのもいいかもしれない、と思ったりもしたのである。
些細なことに「楽しみ」や「幸せ」を見つけるのも、ひょっとしたら才能のうちかもしれないけれど…