生きざま

昨日夕方6時半ころ陶芸教室から帰ってくると、電話の着信履歴のランプがついていました。あら、どなたからかしら? で履歴を見ると電話をくださったのはミノルさん、金谷に住んでいる92歳になるおばあちゃまです。

彼女は、二十数年前までウチのお教室の生徒さんでした。以来、何となく不思議なことにご縁が続いていて、時々電話で話したり、たまに陶芸教室に行くついでに私が立ち寄ったりしている間柄。

あら、何でしょう? と、電話を掛け直しました。

ミノルさん、お電話いただいたみたいだけれど、留守していてごめんなさい。

あー先生。今日はうれしいことがあったので、先生に聞いて欲しくって電話しました。陶芸教室の日だったと思って、もう少ししたらまたお電話しようかと思っていたところ。

え? 何があったの?

今日は今年最初の短歌のお教室で、お題が「縁」だったんです。で、昨年から随分いろいろ考えて作ったものが、お教室で発表したら第一席に選ばれたの。

あら~~よかったわね、どういう短歌だったの?

「ブローチやバッグ手作り 夢売りて あまたの人と 縁結び来ぬ」

あぁ、ミノルさんの生きざまそのものじゃない、とても良い短歌よ。特に「縁結び来ぬ」という結句が素晴らしいじゃないの!

短歌の先生にも結句が素晴らしいって褒められたんです。でね、先生に是非とも聞いて欲しくって。だって、こういうことって誰に言っても分かってもらえるってことではないから。

ミノルさんと言う方は、40代の初めにご主人を亡くされて、以来、女手一つで家を守って娘さんと息子さんを育て、その間にお舅さん、お姑さんを看病して見送り、体が弱くて独身を通した妹さんを見送り、その間、家を空けるわけにはいかないと、洋服や袋物を作ったり、私に習った七宝のアクセサリーを作って、それらを売ることで暮らしてきたと、大変な人生を送ってこられた方です。その後、息子さんが結婚されて家を建て直し同居したのですけれど、残念ながらお嫁さんと折り合いが悪くて妹さんが住んでいたアパートで今は一人暮らし。

でも、いまだに3人の生徒さんに七宝を教えています。

よくお友達から「折角家を建て直したのにそこに住めないなんて。」とアパート住まいを気の毒がられることがあったりしたらしいのですけれど、私に言わせれば、一つ屋根の下で何があったのか知らないけれど、この先お互いに剣突くらわしたりくらわされたりしてストレス一杯で暮らすより、気ままなアパート暮らしの方がよほど幸せよ。よかったじゃないの、妹さんのアパートをそのまま借りられて。それにそんなじゃぁお嫁さんに気兼ねして人も訪ねて来なくなるかもしれないし、ここならお友達も気兼ねなく来てくださるでしょ。それに、その年でこうやって一人暮らしができる健康さと強い意志を持っていられるんだから、それにお友達も一杯なんだし、ミノルさん、とても幸せでありがたいことよ。ま、人と引き比べることもあるだろうし、時にはコンプレックスを感じることもあるというのもよくわかります。でもね、ミノルさん、私たちの仕事は人様に夢を売る仕事だもの。胸を張っていいことよ。ミノルさんの生きざまは、私はとても立派なものだと思っています。

彼女に言わせると、私のその物の考え方を聞いてとても救われたような気がしたんですって。

そうなんですよね、いつも奇麗にしてる。ちゃんとお化粧もするし、彼女に言わせると、店を持つだけの財力がないから自分自身が看板だとおもって身ぎれいにしているのだそうです。

と、そんな「生きざま」が見事に表現されている短歌だと思いました。

 

私、見習わなきゃいけないわ・・・ いつも小汚い格好で平気でいるんだもの~ ^^);

私も50前に「後家さん」になっちゃったわけだし、かといって育てたのは猫にすぎないんだけれど、そういう意味でもミノルさんは私にとってのお手本みたいな存在よ。